農業女子7年目!女子サッカー「吉備国大シャルム岡山高梁」東監督インタビュー
「吉備国際大学シャルム岡山高梁」は岡山県高梁市を本拠地とした、地域密着型の女子サッカーチーム。
待望のホームスタジアム「シャルムスタジアム」が完成した今季から指揮をとる東依里監督は、普段はアグリテクノ矢崎の社員として働く農業女子です。シーズン最終盤の9月8日「NGUラブリッジ名古屋」戦(1−0で勝利!)の試合後、二足のわらじで奮闘する東監督に独占インタビューさせていただきました。
===シャルムスタジアムが出来てワンシーズンを終えました。今期使ってみていかがでしたか?
「高梁にスタジアムを!」というのは、なでしこリーグに入ってからの念願でした。今までジプシーで色々とスタジアムを使わせていただきながら『もっと良くしたいな、このクラブ』とおぼろげに思っていましたが、実際にスタジアムができると責任というか中途半端にできないなというのがクラブに出てきたと感じます。
ホームグラウンドがあるというのは選手たちにとっても良いことですし、私達(監督、スタッフ)にとっても嬉しいですね。こんな立派なスタジアムを作っていただき、私達が優先的に使わせていただいていますし、責任は感じています。
===今日の試合はプレーオフ(チャレンジリーグ5~8位決定戦)でした。今期はなでしこリーグ2部からチャレンジリーグとなり、心機一転シーズンが始まりました。現時点でこの結果についてはどう思われていますか?
なでしこ2部に1年で復帰するのが最優先課題でしたが、今シーズン一番あったのは「勝ちきれない試合」が多かったかなと。15節の内、約半分の試合が引き分けで終わっています。
ゲーム内容としては押し込んでいる試合がほとんどでしたが、そこでやっぱり点を奪えなかったり、1本のカウンターでやられたり、今シーズンは非常に多かったですよね。そこでもうひとランク上に上がれたらよかったのですが、間に合わなかったかなというところです。今日の試合は前半押し込まれていましたが、リーグ戦中ではほとんど押し込む展開になる相手でした。力はあるけれどもそこを結果に結びつけられない、まだまだ地力が足りないですね。非常に悔しいです。
===東監督が指導者の道を歩まれたのは…?
大学3年生の時に選手と指導者両方を経験し、4年生からは指導者だけになりました。それからアグリテクノ矢崎で働き始め、セカンドチームの監督を経て今期トップチームの監督に就任されました。
===トップチームの監督に、と言われた時はどのようなお気持ちでしたか?
すぐに「やります!」と言いました。もちろん他にも候補の方がおられましたので、クラブがどうしたいのかというところに全てを委ねようと思っていました。昨シーズンまでの立場でも良かったですが、去年の成績からそういう動き(監督が代わる)があるかなとは予想しながら、何があってもと、準備はしていました。
===実際トップチームの監督をされてみて…
大変なのは一緒ですね。でも注目される度合いが全然違いますので…今日も怖い顔をしていると言われましたね。責任の度合いも違います。
===サッカーの監督は比較的男性が多いと思いますが、女性の監督として心がけていることは?
特には無いです。同性だからこそ厳しく言える部分もあります。逆に分かってあげられるところもあります。
でもあまり…意識はしていません。自然体で。そして自分自身がやらなければいけないことは絶対に手を抜きません。選手の見本となれるよう、監督としての高い意識を持ってやってきたと思います。
私自身もっと結果を残していく、そこに次の段階がある。求められているところは1つ高くなっていると感じるので。今自分自身が目指しているものを含めて、このクラブが繁栄するためには試合に勝つのがマスト。結果を残していけるようになりたいです。
===東監督は監督業をされつつ、アグリテクノ矢崎で仕事もされています。会社でのスケジュールは?
朝の8時から定時の17時まで働いています。今日のように土曜日試合の時は金曜日の午前中までの勤務です。ぶどう、桃等の農作物の管理から事務仕事まで、色々な業務をしています。
===農業女子何年目ですか?
7年目です。
===7年ですか。結構たちますね。農業はどうですか?
大変ですね・・・今年は雨が多くて非常に困難を極めた年でした。
===仕事で監督らしさを発揮されたりとかは?
・・・していません。
===農業とサッカーが繋がる所はありますか?
農業に限らずですが、目標設定をしてそれをどういう風に達成していくか、どういうプロセスを踏んで…というところは一緒。どこの世界でも通じるものだと思います。まぁできていないことが多いですけれども。人間関係を構築していくところもそうですし。しっかりと仕事をしていくことなどは間違いないのかなと。
▲普段は農業女子。写真は手塩にかけて育てたぶどうの収穫。
===試合後の挨拶にもありましたが、7月の豪雨では高梁市も大きな被害を受けました。
シャルムもシャワールームの開放など地域貢献をされていましたね。その時のことを教えてください。
本来であれば、7月8日にここシャルムスタジアムで試合があるはずでしたが、7日の災害で延期になりました。ちょうどこのグラウンドも陥没して試合ができず、その週は練習もできませんでした。
思ったより被害が大きかったですね。スポンサーやサポーターの方々も被害に遭われたので、泥かき等のボランティア活動を行いました。居ても立ってもいられない状況だったので、みんな練習と並行しながら2,3週間くらいはやっていましたね。本当にひどかったです。その時は『サッカーをやっていていいのか』とクラブ全員が思っていました。それでも自分たちができることからやっていこう!と今シーズンは活動していました。
===9月15日は札幌での試合が予定されていますね。
対戦相手のノルディーア北海道さんは、地震の影響で今日の試合も中止になっています。私たちも豪雨災害後の試合では岡山県下で試合をするのが難しく、特別にアウェイのチームに会場提供をしていただきましたので、そうなるかもしれません。臨機応変に対応していきます。北海道出身のシャルムOG選手も沢山いるので、連絡を取って無事を確認しています。どういう形になるかまだ分かりませんが支援していきたいと思っています。
▲試合終了後は休む間も無く、後片付けとファンサービス。
===チームの今後の予定を教えてください。
残りのプレーオフの試合、11月にある皇后杯がシャルムとしてのメインです。大学生はそのあと大学選手権も控えています。
===「東 依里」としての今後のビジョンは?
監督のライセンスにはS,A,B,C,D級があります。私はB級を持っていますが、1年でも早くAを取りに行きたい。将来的にはSまで取りたいです。今は女子サッカーの子たちを監督していますが、私自身はもう少し上のカテゴリまで指揮を執ってみたい。海外ももし行けるなら行ってみたいですね。
(なでしこ2部リーグの監督はB級ライセンスでもできるが、1部になるとA級が必要。さらにS級はJリーグや日本代表監督になれる資格がある。)
===アグリテクノ矢崎のホームページをご覧になっている方や、アグリテクノ倶楽部会員の方に一言お願いします。
サッカーも農業も、時代の流れによって本質は変わらないけれども求められていることは変わってくると思います。アグリテクノ矢崎も様々なものを作っていますが、お客様に求められている機械、食べ物を作ってどんどん貢献していけるように。
シャルムもクラブとして地域の皆様に、そして女子サッカー界に求められていることが絶対あると思うので、それにしっかり応えていけるチームにしたいです。そこが本質だと思いますので、社員としても監督としても頑張っていきます。
インタビュー:2018年9月8日
東監督の話から、地域貢献や互いのチームを支援し合う気持ちが強く感じられました。後日、残念ながらノルディーア北海道戦の中止が発表されましたが、災害や試練も目標を達成するためのプロセスの一つかもしれません。女子サッカーリーグの今後の発展を応援しましょう。
▲インタビューの最後はシャルムポーズ(CharmeのC)で決めてくれました。